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2013年07月25日

堅調さ映す住宅・不動産市況データ 本格回復視野に 不安材料は払しょく 税制、金利など背景 需要に根強さ

年率換算で住宅着工が100万戸の大台に乗せ、住宅展示場はにぎわい、新築マンションは売れる。中古住宅の動きも首都圏などを中心に底堅く、住宅・不動産市況はいま本格的な回復をうかがう様相を見せている。消費税率の引き上げを控え、住宅ローン金利が上昇の兆しを見せ、建築コストアップも伝えられる。それらが契機となって需要の動きが活発化してきた。この回復への動きと、好況感は本物なのか。

「最近の市場動向を示す主なデータ」では、文字通り、最近の市況の好調さを映し出している。国民の所得増が実現していない状況の中でも、データは月を追うごとに良くなっている。数字上では、絶好調の域で、不安材料は払しょくされたように見える。

「住宅・不動産市場は、いま強い追い風の中にあるようだ。ここまで好条件がそろうのは平成バブルが弾けて以来なかったのでは」というのは、業界歴20数年の上場不動産会社の中堅幹部だ。昨年末に自公連立の安倍晋三内閣が誕生して、まず円安・株高効果が生まれ、それが徐々に浸透し、一般サラリーマン層にも心理的な好影響を与え、「今のうちに」という行動につながっていると分析する。この間、新築住宅分野では消費税引き上げや建築資材や労務費コストの上昇圧力があったのに加え、住宅ローン金利と連動する長期金利が上がり始めるなど、需要者の背中を押す動きも重なった。

一方、中古流通市場では、良好な住宅地では地価の下げ止まりから反転傾向が出始め、成約件数が伸びる一方で、売却の新規登録物件が減少する傾向も続いている。成約価格も下げ止まり傾向から、一部上昇機運も見られるようになった。金利と共に物件価格にも先高観があるため、需要者の購入意欲が高まる一方で、業界側は顧客に「買うなら、今でしょ!」と、非常に勧めやすい条件がそろっているというのだ。

こうした新築住宅、中古住宅だけでなく、08年9月のリーマンショック以降振るわなかったオフィス賃貸や賃貸住宅でもようやく底打ち、反転気配が見られる。オフィスの空室率は東京23区で7%前後まで下がったほか、新築ビルの賃料は底打ちの動きも出ている。賃貸住宅はかつての大量供給と景気後退に伴う需要の減退で、10~20%程度の空室があるといわれているが、日本賃貸住宅管理協会の短観によると、前期と比べ改善傾向にある。

全日本不動産協会理事長の林直清氏(東京都杉並区、大興住宅社長)は、最近の住宅・不動産市況について自社の動向として、「全体的にというより、いいところもあれば悪いところもある」という。「売買仲介は非常に好調で、中古マンションで3000万円前後の物件の動きが良く、成約件数は倍増している。その一方で、賃貸仲介は良くなく、賃貸管理では空室が増えると共に賃料滞納の割合が上がっている」と明暗が分かれているのだ。売買物件の購入者は、「賃貸マンションで10万円前後の家賃を払っている人のほか、目立つのは台湾の投資家。4~5戸まとめて購入する人もいて、こちらは円安効果と利回りを狙ったもの」と分析する。賃貸から持ち家への動きは、賃貸市場を一時的に軟調にさせる一面もあり、回復度合いは物件の種類などによって微妙な温度差が出ているようだ。

このように、住宅・不動産市況はいま本格回復へ向かう大きな岐路に差しかかっている。もちろん、首都圏などの大都市圏と地方都市での違い、同じエリア内でも立地の優劣や築年数などによって回復度合いは異なっている「東京が回復しているといわれても、地方の我々にはピンとこない。アベノミクス効果はまだ波及してきていない」という声があるのも確かだ。期待先行ではなく、回復感の着実な広がりが求められる。

「給付措置」の効果

では、各種指標で表れている好調さは今後も続くのだろうか。新築住宅の建設やマンション販売はいま、消費税引き上げの経過措置期限(9月末の契約まで現行税率)を前に好調に推移している。その反動が来るのかどうかが焦点だが、6月末に自民・公明の与党税調が消費税率引き上げに合わせて実施する「給付措置」を発表したことで、駆け込みと反動減の動きが緩和される形となった。

「悪くなる材料は当面、見当たらない。海外の経済要因くらい。だが、中長期的には、用地取得競争や建築のコスト高をどう対応するかなど、好況時に特有の課題が再び浮上し始めている」(大手不動産経営企画担当)という。

最近の市場動向を示す主なデータ

●新設住宅着工戸数(全国、国土交通省)=5月は7万9751戸で前年比14.5%増。これで12年9月以降9カ月連続、前年水準を上回る。季節調整済み年率換算値は102万7000戸。100万戸超えは08年10月以来4年7カ月ぶり

●新築マンション供給と契約率(首都圏、不動産経済研究所)=13年上期(1~6月)の新規発売戸数は2万4299戸(前年比17.1%増)で、2年連続の増加。最近ではリーマンショック前の07年上期(2万8284戸)に次ぐ高い水準。初月契約率の平均は78.8%で、4年連続で好調ラインの70%を上回った。6月単月は新規発売が4888戸(前年比22.0%増)で月間契約率が81.6%。これで5カ月連続70%台後半以上

●中古マンション成約件数(首都圏、東日本不動産流通機構)=6月は3149件で前年比17.9%増。これで昨年9月以降10カ月連続前年水準を上回り、2月以降は2桁の大幅増。13年第2四半期(4~6月期)実績は9344件(前年比22.1%増)で、7期連続の増加

●オフィスビル空室率(全国13都市、シービーアールイー)=13年第2四半期(4~6月)は全国的に需要が堅調で、全都市で空室率は前期と比べ0.1~1.1ポイント低下した。東京23区は6.8%、大阪は10.0%、名古屋は9.8%など。東京グレードAの想定成約賃料は坪当たり月額3万600円と2期連続の上昇

●日本の不動産投資額(全国、ジョーンズラングラサール速報)=13年上期(1~6月)の投資額は209億米ドルで前年比50%増となった。これを円建て換算すると、前年比85%増の約2兆円となり、12年通年の実績を上期だけで上回る

●経営者の住宅景況感(全国、住宅生産団体連合会)=4月度調査によると、4~6月期見通しの景況判断指数は総受注戸数がプラス81ポイント(1月度調査プラス67)、総受注金額がプラス78ポイント(同64)と、戸数、金額とも引き続き大幅プラスの見通し

●賃貸住宅の景況感(全国、日本賃貸住宅管理協会)=12年度下期調査によると、反響の判断指数(0が良い、悪いの分かれ目)は22.9で前期比9.4ポイント増加したほか、来客数は13.6とプラスに転換。成約件数も16.8と前期を12.7ポイント上回ったものの、成約賃料はマイナス15.4だった。賃料動向は厳しいままだが、それでも前期(マイナス22.7)より回復傾向にある

(住宅新報webより引用)

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