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2017年03月28日

地価公示、私はこう見る

■動きを確実なものに

木村惠司・不動産協会理事長 17年地価公示は、全国平均では2年連続で上昇し、住宅地では9年ぶりに横ばいに転じた。三大都市圏では住宅地、商業地とも引き続き上昇し、地方圏でも下落率が縮小するなど、地価の回復傾向が持続している。こうした地価の動きをより確実なものとし、デフレからの脱却と力強い成長につなげていかなければならない。引き続き、国内投資の促進と生産性向上を実現する成長戦略を強力に推進し、経済成長の重要な原動力である都市の国際競争力を高め、国全体の経済をけん引すると共に、内需の柱である住宅投資を活性化し、住宅市場を安定的に推移させていくことが不可欠だ。

■現場の相場観に近い

田中俊和・不動産流通経営協会理事長 今回の地価公示を見ると、三大都市圏と地方の四市の地価は、全用途平均で4年連続の上昇となった。東日本不動産流通機構、近畿圏不動産流通機構によると、昨年1年間の全物件の成約平均価格は共に約4%のプラス、特に中古マンションの成約価格は5%強と上昇基調が継続し、法人による投資需要も相変わらず強いものがあるので、今回の地価公示は現場の相場観に近い。今後も、実需の住宅取得並びに法人・個人による不動産投資は引き続き活発に推移すると見られ、地価はしばらく回復が続くものと思われる。

■マンションは動向注視

菰田正信・三井不動産社長 三大都市圏および地方四都市を中心に地価の上昇が継続。全国・全用途平均が2年連続で上昇し、住宅地も9年ぶりに下落を脱して横ばいに転じた。首都圏マンション市況は、都心や駅近物件など比較優位にある物件を中心におおむね好調に推移。一方、販売価格が高位で推移していることなどから、物件によっては顧客の検討期間の長期化や様子見といった状況も見られ、今後の動向を注視している。オフィスビルは、東京都心では募集賃料の上昇が継続し、地方都市でも空室率の改善傾向が続いている。今後もBCP対応や省エネ対策に優れ、人材確保や生産性向上に資するビルへの需要の拡大が続くと見ている。

■オフィス需要は旺盛

杉山博孝・三菱地所社長 地価の回復をよりはっきり感じることができる。当社ビル事業においても、立地改善や、働き方改革・生産性向上のための集約・移転需要が顕在化し、空室率が低下、賃料の上昇が見られる。旺盛なオフィス需要を受け、3月末時点の東京・丸の内地区の予想空室率は2%程度だ。住宅地では、駅近など利便性の高い物件の需要は引き続き旺盛で堅調に推移。個別物件では、東京都品川区の全戸が1億円以上の高額物件「ザ・パークハウス白金長者丸」(34戸)が販売開始1年未満で完売し、地方でも福岡市の「同桜坂サンリヤン」(322戸)は竣工時期が1年先にもかかわらず、6割が契約済みと好調だ。

■大都市圏、需要は堅調

仁島浩順・住友不動産社長 今回の地価公示では、全国住宅地が9年ぶりに下落から横ばいに転じた。三大都市圏および地方四市では、住宅地・商業地とも4年連続の上昇となり、発展に伴い人口の集中傾向にある大都市を中心として上昇基調となった。今年度は経済の先行き不透明感が続き、建設工事費の高止まりが依然として懸案であるなど、不動産市況を取り巻く環境は楽観できない情勢にあるものの、積極的な需要が堅調であり、東京のオフィス市場では引き続き空室率は低下、賃料も上昇傾向だった。また、分譲マンション市場も首都圏・地方大都市圏ともに利便性の高まる都心物件を中心に、新築・中古とも需要は堅調に推移した。

■地価回復が全国に

植村仁・東急不動産社長 地価の回復が都市圏のみならず、全国的に波及したものと捉えている。住宅地は総じて堅調に推移し、上昇の継続または下落の縮小が見られた。都心部を中心に、駅前や再開発地域など供給が少ない地域では上昇傾向が一段と強まり、当社では「ブランズ横浜」(横浜市)、「ブランズタワー御堂筋本町」(大阪市)などの販売が好調だ。商業地は、オフィスの空室率低下や、店舗やホテルなどの需要増加傾向も継続。「東急プラザ銀座」が3月末に開業1周年を迎えるが、多くの来街者に施設を利用してもらっている。

■住宅需要 総じて堅調

宮嶋誠一・野村不動産社長 住宅市場は、首都圏新築分譲マンションの販売価格は高い水準にあり、供給量は低調であるものの、新築戸建てや中古住宅を含め、総じて需要は堅調に推移している。東京近郊部や地方中核都市では、駅周辺再開発などによる新規分譲マンションで引き続き価格の上昇が見られ、シニア層や共働き世帯などの需要が旺盛だ。オフィス市場では、空室率の低下傾向が継続し、賃料は新規募集、改定でも引き続き上昇が見られる。商業施設に関しては、店舗やホテル需要の高まりで総じて不動産価格の上昇が見られる。

■住宅、更なる二極化も

野村均・東京建物社長 昨年に引き続き全用途平均で上昇となった。堅調な住宅需要、オフィス空室率の低下・賃料上昇による収益性向上や良好な資金調達環境などを背景に、住宅地、商業地の地価は総じて上昇傾向が続いた。賃貸オフィス市場は空室率の低下が続き、賃料水準も引き続き上昇傾向が期待される。分譲住宅市場は、顧客による物件の選別化傾向が強まり、更なる二極化傾向が懸念される。不動産投資市場は引き続き活発な取引が期待されるが、価格高騰に伴う投資マインドの変化については十分留意していく必要がある。

■大量供給への備え必要

伊達美和子・森トラスト社長 全国商業地の地価は2年連続で上昇し、上昇率も拡大した。東京都心部では銀座が大幅な上昇を維持しているほか、虎ノ門や日本橋、渋谷など大型開発の多いエリアで高い上昇となった。三大都市圏と地方四市、更に訪日外国人から注目される京都や沖縄、北海道などが高い上昇率を示したことが特徴的だ。今後については、東京都心部の大規模オフィスビルの供給量が17年は例年と比べ低水準であることから賃料は引き続き上昇基調が見込まれる。一方、18年から20年までは大型開発が順次竣工し、大量供給が見込まれるため、成長産業の育成と共に世界からヒト・モノ・カネ・情報を呼び寄せ、需要を喚起する必要がある。

■更なる市場活性化を

伊藤博・全国宅地建物取引業協会連合会会長 雇用情勢の改善、金融緩和や住宅ローン減税等を背景に、地価回復傾向が地方圏への着実な波及を示したことは歓迎したい。しかし一方で、地域間格差が鮮明になってきている点や、賃貸物件の新築着工戸数の増加に伴う既存物件の利回り低下による需要の先細りは懸念材料だ。住宅ストック流通の担い手である我々としてもこうした新たな潮流をとらえ、インスペクション・瑕疵保険制度の研修の充実等による普及啓発と税制措置の活用により更なる市場活性化に鋭意取り組むと共に、国が進める中古住宅市場活性化策や空き家に係る諸施策に期待したい。

■住宅市場の需要喚起を

原嶋和利・全日本不動産協会理事長 昨年に引き続き、住宅地・商業地ともに総じて上昇基調ないしは改善基調にあることは前向きに評価できる。特に地方圏において地価の下落幅が縮小傾向を示していること、また一部の地方都市では三大都市圏の上昇率を上回っていることなど、地価上昇機運が地方の都市部にまで浸透してきていることの現れではないか。その一方で楽観的にばかりなれない点もある。今ある旺盛な不動産市場が再び冷え込まないように政府には、引き続き、住宅・土地取得に係る軽減措置をはじめ、若年世帯・子育て世帯、そして高齢者世帯に対する居住支援策を通じて、住宅市場の需要喚起を強く推進していただくことを期待したい。

(住宅新報Webより引用)

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