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2013年11月09日

土地は売るよりも「使え」。今どきの賢い土地活用とは?

■店舗、高齢者向き施設、立体駐車場……土地活用は多様化している

数ヶ月前のことである。私は父から相続した家、土地の処分でご相談を受けた。首都圏近郊のリゾート地に海の見える広大な土地、凝った和風建築の家があるそうで、父は売らないで欲しいと遺言を残したという。そこで、近隣の不動産会社に相談はしたものの、賃貸としてはニーズがない、売ったほうが良いと異口同音に言われたという。しかし、それだけの立地、建物であれば賃貸としての利用以外にも手はあるのではないか、私はそう思った。例えば、レストラン、ウェディング会場としての利用はありえないか、あるいは宿泊施設としては……。

不動産、土地を活用するといえば賃貸住宅、特にアパートを思い浮かべる人が一般的だろう。しかし、選択肢はそれだけだろうか。特に今は買うなら得できるが、売るには損という時期である。所有している土地、あるいは相続する、相続した土地をどう活用するか、悩んでいる方も少なくなかろう。狭い、道路付けが悪い、立地が悪いなどとハンディのある土地を相続した場合など、アパートだけを活用法として考えると無理がある。しかし、その考えは過去のものだと、土地活用に詳しいパワーコンサルティングネットワークスの谷崎憲一氏は言う。

「確かに昔は土地活用というとアパートくらいしかなかった。ただ、その時代には借りる人が多かったので、それでもOKでした。しかし今は賃貸物件に空室の多い時代。賃貸アパートを建てれば入るという時代ではありません。その代わり、ニーズが多様化しているので、やりようによっては、狭い、駅から遠い、その他かつてはデメリットと思われた立地、広さでもそれに応じた活用ができるようになってきています」

例えば狭い土地。「アパートを建てると考えると、10坪以上の広さが欲しいところですが、賃貸戸建てなら車1台が入る、7坪の土地があれば可能。一戸建てのニーズが高い場所であれば、十分収益は上がります。また、立地が良ければもっと狭くてもOK。今、原宿の、弊社の近くで5坪の土地にビルが建設中ですが、立地が良ければ、それだけの土地でも活用はできるのです」(谷崎氏)

あるいは駅から遠い、駅として認知度が低いなどの、立地の悪い場所でもやりようはある。「今はアドレス、つまり立地が重要な時代です。しかし、物件にそれ以上の付加価値を付けられれば立地のデメリットはカバーできる。例えば、マンションでもペット共生型、ライダーズ向き、音楽可など対象を特化した物件を作る手がありますし、不足している高齢者向きの施設を作るなどという考え方もあります」(谷崎氏)。アパート、マンションでも他と対象を変えることで収益を上げる工夫はできるし、店舗、オフィス、駐車場、高齢者向き施設などと作るものを広げて考えれば、どんな土地にもその場所に適した用途はあるはずというわけだ。


■2時間以内に行ける物件でなければ土地活用は成功しない

ただし、成功の可能性は全ての土地にあるとしても、成功できる活用を選択できるかどうかは本人次第。選択肢が増えた分、ノウハウが必要で、本人にやる気がなければ土地活用は成功しないのだ。

谷崎氏は「土地活用で失敗するのは『人から勧められたから始めた』というケース。『土地を遊ばせておくならアパートでも建てませんか』などが良い例です。土地活用の成否は情報収拾で7~8割決まりますが、不動産関係の情報は自分から求めないと入ってはこない。自分から情報、ノウハウを求めに行く、自分だけでは足りないと思ったらパートナーを探すなど、自分から動ける人でないと土地活用はうまく行きません」と厳しい。

さらに、遠距離物件も勧めないと谷崎氏。「2時間ほどで行ける、月に1度くらいは見に行けるような距離にある物件でないと、次第に人任せになり、やがては丸投げ状態になる。すると、管理がいい加減になり、いいようにされる結果に。不動産は愛情をもって育てる、良くしていくつもりがないと、成功しません。そこが金融投資とは異なるところです」

また、もし遠隔地に相続した土地があり、売りたくはないが、何かしら活用したいという場合には、自分で経営するのではなく、土地信託や定期借地などを利用して、土地を貸すような方法を考えたほうが良いかもしれない(詳細は4ページ)。

では、続いて、実際に土地活用を行うにあたって、やるべきことを谷崎氏に順に教えていただこう。


■土地活用の第一歩は、自分の財産の全体像を知ることから始まる

「土地活用の第一歩はその土地の用途地域を調べるところから始まる」と谷崎氏。ご存知のように市街化区域内では土地の用途が混在、居住環境が悪化したり、業務が妨げられることがないよう、土地ごとに建てて良い建物の種類などを定めた用途地域が定められている。また、これに付随して、建ぺい率、容積率、高さ制限(第一種・第二種低層住居専用地域)などが決められる。それを知れば、自分の土地に建てられるのは住宅だけなのか、あるいはオフィスや商業施設も可能なのかなどが分かる。また、建ぺい率、高さ制限が分かれば、3階建てまでしか建たないのか、あるいはタワーが建つのかなども分かる。その上で、その土地にどのようなニーズがあるかを重ねて考えるというわけだ。

用途地域は自治体で図にしてあるので、それを見れば建ぺい率、各種制限なども含めてすぐ分かる。自治体によってはホームページにアップしてあることもある。

同時にその土地だけでなく、自分の収入、その他資産の額、相続などを考え、トータルで出資できる額や収支、税金対策の必要性などを総ざらえしてみよう。自分で経営する場合は、それなりの手間や費用もかかる。

「土地活用としてはプラスになっても、資産全体としてはマイナス、やらないほうが良いという判断もありえますから、この作業は慎重に。一人で難しければ、プロに頼む手もあります」(谷崎氏)


■土地活用最大のポイントはビジネスパートナー選び

おおまかな方向を決めたら、次はビジネスパートナー探しである。活用の選択肢が増えた分、事前のマーケッティングは以前よりも重要になっているし、対象を絞った物件作りにはノウハウも必要である。それを個人で全部やるのはとうてい無理。そこで信頼できるビジネスパートーナーを選び、サポートしてもらおうというわけだが、ここで大事なのは、提案力と中立性だ。

「商品メニューが豊富で、様々な提案をしてくれそうな2~3社を選び、そこから事業計画の比較へと詰めていくのがベストなやり方。最初の時点で、自社製品のアパート1案しか提案してこないような会社はダメです」(谷崎氏)

難しいのは中立性。当然のことだが「ハウスメーカーや建設会社は『土地があるなら建てましょう』と言うだろうし、不動産会社なら『売りましょう』、リフォーム会社なら『リフォームしましょう』と、それぞれの立場からの提案が主になってしまいがちです。しかし、それを超えて、オーナーにとってのベストを考えてくれるパートナーが理想。最初から中立的な立場であるコンサルタントも含め、ただ建てるのではなく、何をどう建てるのか、どうリフォームするのかなど、客観的にも納得できる提案をしてくれる会社を選んでください」(谷崎氏)。


■総事業費、金利、収入計画、ランニングコストで良し悪しを判断

①総事業費
これは建物の建設費用を中心に、事業開始までにかかる総費用のことである。具体的には地質調査費、設計費、建築費など建物を建てるに当たって必要な費用に加え、火災保険料や生命保険、登記の費用や銀行関係の出費などが主なもの。現在建物が建っていれば解体費が、居住者がいれば立ち退き料なども必要になる。この費目で見ておきたいのは、予備費が計上されているかどうか。ぎりぎりの予算しか見ていない計画では予期せぬ出来事に対処できないからである。

また、立ち退きが必要な場合であれば、費用だけでなく時間がかかることも覚悟しておこう。相続に向けて立ち退き、建て替えということであれば、最低でも1年、2年以上は見ておいたほうが無難。相続が迫っているという人は早めに手を打とう。

②金利
ここ10年以上、低金利が続いてきているため、金利上昇局面を予想する人は少ない。しかし、20年タームで見ると金利は平均で4~5%。将来に渡って低金利であることを前提に立案されている計画には不安がある。

③収入計画
賃料設定が妥当かどうか、空室率をどのように見積もっているかがポイント。きちんとしたマーケティングに基づいて賃料が算出されていなければ空室が出てしまうし、築後5年目以降は賃料は下がる可能性がある。新築時の賃料で30年間算出していたり、空室はずっとゼロとするなどの甘い判断は危険。

④ランニングコスト
建物、設備の維持管理、清掃などには思っている以上に費用がかかるもの。固定資産税などの租税公課も含め、必要な支出を網羅しているかどうかがポイントだ。

複数社の事業計画を比較検討、信頼できるビジネスパートナーを選ぶことができれば土地活用はその行程の8割まで行ったも同然。後は計画を遂行するだけである。

以上、一般論としての土地活用の考え方、進め方についてプロに教わってきたが、以降では比較的狭い土地で、経営もラクという、これから注目の活用法について見ていこう。

【谷崎憲一氏】
パワーコンサルティングネットワークス代表取締役

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