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2013年11月20日
皆様が不動産投資で重視する指標は何でしょう。家賃収入から管理費・固定資産税等の運営経費を引いた純収入を購入価格で割った数値は純利回りと呼ばれ、表面利回りよりも重要とされています。また、純収入から元利金返済額や、さらに納税額を引いた、キャッシュフローの絶対額やそれに対する売買価格や投入自己資金に対する割合を重視する方もいます。
アパートローンの審査において、税引前あるいは税引後のキャッシュフローは重要です。まず銀行が審査するのがそこだからです。これは、アパートローン以外の一般的な設備資金融資でも、当該プロジェクトの融資審査においても同様です。特に、アパートローンでは、現況あるいは満室想定の賃料収入に銀行所定の経費率や空室率をかけて純収入を出して、金利が銀行所定の金利(これを「審査金利」と言います)に上昇しても返済可能かというストレステストをするのが通常です。
キャッシュフローを税引前・税引後どちらで見るかは銀行により異なりますが、私達投資家の実務上は、税引後のほうが重要です。その税引後キャッシュフローを多く出すために有効な方法が減価償却費です。これは支出を伴わない経費であり、これが多いほど税務会計上の利益が下がり、課税額が減少し、税引後キャッシュフローが多くなるからです。同じ物件を買っても買い方と税務会計処理により、毎年の減価償却費は異なってきます。
例えば、1億円の物件を土地9千万円・建物1千万円で買った場合と、土地1千万円・建物9千万円で買った場合とで比較してみましょう。なお、土地・建物の内訳については、売買契約書記載の金額や消費税額に基づくのが基本ですが、記載のない場合には、合理的に按分することになります。仮定として、借入額1億円、減価償却期間30年、返済方法30年元利均等返済、金利3%、所得税または法人税率30%、年純収入1千万円とします。
■■1年目の税引後キャッシュフローの比較■■ ※万円未満四捨五入
●土地9千万円・建物1千万円の場合
・純収入1000万円 - 減価償却費33万円 - 支払利息30万円 = 税引前利益967万円 → 税額290万円
・純収入1000万円 - 元利返済額51万円 - 税額290万円 = 税引後キャッシュフロー 659万円
●土地1千万円・建物9千万円の場合
・純収入1000万円 - 減価償却費300万円 - 支払利息30万円 = 税引前利益670万円 → 税額201万円
・純収入1000万円 - 元利返済額 51万円 - 税額201万円 = 税引後キャッシュフロー 748万円
上述のとおり、減価償却費が多いほうが、税引後キャッシュフローが多くなります。これが手元に残るお金ですので、それゆえ、買主は建物価格を高く契約しようとし、また、減価償却期間を短く税務処理しがちです。
しかし、このような税引後キャッシュフロー偏重の投資法には、二つの盲点があります。第一は、猪俣淳氏のコラム「出口戦略の必要性と判断の仕方について」に書かれていることから分かるように、売却価格が低く残債以上の手取りが確保できなくなると、それまで得てきたキャッシュフローの蓄積を失ってしまうことです。すなわち、購入から売却まで含めた収支判断が必要ということです。
第二は、過大な減価償却費により、利益が減り、また、固定資産(建物)の価値が下がり過ぎることから、その後融資を受ける際に不利になることです。個人向けアパートローンの審査では、この点あまり重要ではありません。法人名義でも、実質個人の資産管理会社向け融資は個人融資と同様に扱われます。
法人名義の融資が実質個人の資産管理会社として取り扱われているのか、事業法人として扱われているのかは、担当銀行員に「この会社で不動産賃貸業以外の事業を行っても業績次第で融資に支障ありませんか」と尋ねれば直ぐに分かります。前者の場合、売上が家賃収入とそれに付随するものに限られます。後者では、売上の中身は問われません。前者は元来地主が節税や事業承継目的で作る法人であり、いわゆる「サラリーマン投資家」が法人を作って融資を受けるという場合、家賃以外の収入や資産背景が審査に大きな影響を及ぼし、一つの銀行から何億円も借りるのは、普通のサラリーマンでは難しい現状にあります。それに対し、後者の場合、会社の財務状況次第で、10億円超の融資を受けることも可能です。
通常の法人としての融資では、入口段階として、前期決算書での利益と純資産が問われます。多くの中小企業で、純資産は資本金+利益剰余金(毎期の当期純利益の累計額)です。赤字で純資産がマイナスの会社は、通常、正常先とは見られず、融資対象外とされがちです。どうして赤字になり、また、純資産がマイナスになるのか、不動産賃貸業の法人がそうなる理由の一つが、減価償却費の取り過ぎなのです。
減価償却費は支出を伴わない経費であり節税効果があるので、税引後キャッシュフローは、前述の数値例の通り減価償却費が多いことで上がります。しかし、それが過大だと、建物が毎年過大に減価して過少評価され、特に融資期間の長いハイレバレッジ投資では、負債額の減少以上に資産額が減少し、債務超過(純資産のマイナス)に陥りかねません。また、不動産投資では前述の数値例ほど純収入が高くないのが一般的であり、減価償却費を多く取り過ぎることで赤字になりかねません。
そうなると、銀行から、融資できない会社として取り扱われる恐れがあります。
不動産投資の書籍を読むと、減価償却費を多くとることの重要性が解かれていることが多いです。確かに、キャッシュフローがマイナスでは倒産してしまうので、そういう著者の論調はもっともなのですが、それをやり過ぎると次の融資を受ける際に不利になるので注意が必要です。
不動産投資の融資については、個人向けアパートローンを前提に書いているものが殆どです。確かに個人向けアパートローンで銀行が見るのは、既存物件と新規物件の収支であり、そこにおいては減価償却費が多いほうが有利に作用します。しかし、法人としての融資となると、利益、資産・負債といった財務数値の分析から審査に入るので、個人を前提とした投資手法がそのまま当てはまる訳ではありません。
巨額の融資を受けて本格的に不動産投資をされたい方は、注意が必要です。
(HOME'S不動産投資より引用)