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2013年11月28日

収益物件特有の物件調査

収益不動産は、一般的な不動産調査に加え以下に述べる項目についても精査を加える必要がある。

1.共用部の維持管理状況

一般に、所有者が居住者となる分譲マンションに比べ使用状態が丁寧とは言えないケースが多くみられる賃貸物件では、共用部分の消耗がより進んでいる場合が多く見受けられる。区分所有マンションでは管理組合及び管理会社の、一棟マンション・アパートでは現オーナーの取組姿勢によって大きく物件の状態が変わる為、修繕計画の有無、メンテナンス履歴のチェックや目視確認などを行い、事業継続に必要なコスト計算をする必要がある。

・フェンス・ブロック・舗装といったエクステリア
・建物外壁塗装の劣化・タイルの剥がれや浮き・目地の劣化など
・屋上・解放廊下・バルコニーなどの防水
・エレベーター・駐輪場・ごみ置場・集合ポストなど
・電気設備や給排水設備など

区分所有マンションでは、一定規模以上の戸数規模が無い場合、修繕積立金不足などにより十分な維持管理が実施できない場合が多い。
また、自主管理物件や管理会社が力量不足である場合もメンテナンスの繰り延べによる物件の劣化が見られる場合が多い。
改善をはかるには、管理組合の議決を得るなど手続き的な条件が必須となるので実施のハードルは高くなる。従って、物件選定の段階での注意を払うことが特に重要となる。
一方、単独所有である一棟物件の場合は意思決定が自由にできるため、維持管理状態が不良である場合でも更生がより容易になる。従って、そのような物件を取得して自ら改善するバリューアッド投資を選択する方法も選択できる。
ただし、更生・維持管理にかかわるコストは新築時の建築コストに正比例するため、鉄筋コンクリート造や重量鉄骨造、エレベーター付物件、あるいはレンタブル比(賃貸床面積÷総床面積)が低くなるペンシル状物件などで、なおかつ相応の賃料単価が取れない場合は収支を圧迫し、投資計画を大きく狂わせる原因となる可能性が高くなる。取得段階で修繕計画の立案・見積もりの実施などしっかりとした見込みを立てることが重要である。


2.建築条例・法規制

アパート・マンション等の共同住宅・長屋住宅は不特定多数の居住・利用という観点から接道幅員、敷地内避難通路、内装制限、消防設備などの法規制が一般住宅に比べより厳格になっている。建築基準法・消防法のみならず各自治体ごとに異なる条例・規制などに適応しているかの調査が必須となる。建築確認通知書及び検査済証の確認をするのはもちろん、特に専用住宅を改修してシェアハウス(寄宿舎)として利用する、ロフトの準居室利用、階数や面積の変更を伴う増改築、駐車場を事務所や店舗などに改装して利用しているなど、用途や構造を変更して利用している場合には特に注意が必要。物件所在地を管轄する自治体の建築指導課などで詳細調査を行うべきである。


3.入居者の属性

売主からレントロール(入居者一覧)を入手し、現在入居している賃借人の属性(年齢・性別・家族構成・勤務先・収入・保証人など)を、賃料支払能力やトラブルを発生させる恐れがないか、万一の問題が発生した場合の引受先はあるかといった観点で情報収集を行う。
入居審査を行った当時の入居申込書や居住期間中におけるトラブルの有無を記録した管理会社の対応履歴などによって確認することができるが、管理会社や所有者によって書類や記録の保管状況に差がある場合が多く、また個人情報保護法との兼ね合いに注意する必要がある。
直接入居者本人に確認することは困難なので現地調査を行い、賃料に不相応なあるいは不正改造された車両やバイクが駐車されていないか・自転車は乱雑に置かれていないか・トラブルや問題を予見させる張り紙や掲示物がないか、夜間や雨天時にも取り込まれていない洗濯物、ごみや吸い殻などの散乱物、ポストやエントランスホールなど共用部の破損、看板・表札など、総合的な雰囲気も含めた予想することも重要。特に問題が無い場合でも、子供用自転車やベビーカーが多いことから子育て世帯が多いと予想され、近隣環境の良さが優位点と考えられる・・・等、得られる情報は多い。


4.賃貸契約の内容

・賃料、共益費
・普通借家契約か定期借家契約か
・連帯保証人付保か保証会社利用か
・火災保険・借家人賠償保険などの付保状況
・契約日と更新日、更新料の有無
・敷金や保証金の取り扱いに関する決め事
・特約条項(消費者に不利な特約(普通借家契約における契約期間終了後の立退き条項など)は無効となるので注意)


5.市場性

収益不動産として運用を行っていくうえで、その物件が果たして市場に受け入れられ事業として成り立つのかという判断は、計画の根幹を為す重要な要素となる。ここでは、「不動産投資に向いている場所かどうか」という判断をする場合に役立ついくつかのポイントを紹介する。なお、これら調査の対象となる賃貸物件は、交通便・間取り・面積・賃料・築年数などによって異なる結果が出るので、それらを特定した分析を行うことが肝要である。また、それを行うことによって投資の方向性を打ち出すうえでのヒントとなる事が多い。

(1)人口・世帯数・ストックのバランスを見る
若年層が多く、人口ピラミッドがいまだピラミッド状を維持し、持家率が37.6%と低く、産業・経済面から見ても投資エリアとして魅力的な福岡市の人口増加は、2008年(平成20年)から2012年(平成24年)の5年間で約6万5千人。また、世帯数は約5万6千世帯の増加がみられた。持家率から判断すると、この中の約3万5千世帯が新たに発生した賃貸需要と考えられる。
一方、同期間に供給された住宅は約7万戸、貸家はこのうち約4万戸・・・。同様の状況は福岡に限らず多くの大都市で見られる。逆に市場自体が小さく注目されない地域において需給バランスが保たれているケースも少なくない(ただし、それが投資市場として成り立つ地域であるという確約をもたらすものではない)。
人口の増加・世帯数の増加・ストックの増加については、各自治体のホームページや総務省、国交省のサイトから調べることができる。
貸出されている賃貸物件の戸数あるいは床面積の変化から需要のトレンドを予想する方法としては、「吸収(Absorption)」がある。計算式は「期末の占有-期首の占有」あるいは、「期首空室数+期中供給数-期中滅失数-期末空室数」。市場の需要は吸収の増減に正比例する。
また、賃貸物件の検索ポータルサイトから近隣エリアの需給ギャップを調べるために「敷金・礼金」の有無に注目する方法もある。当該物件の諸条件を検索項目に入力し、競合・比較物件となる募集物件一覧を出すと、特定の条件では敷金・礼金が取れていたり、取れていなかったりという傾向がわかる。空室を解消するために、賃料値下げに先んじて初期費用の削減を行う方策が一般的な賃貸市場の特徴を利用した判断方法として簡易的であるが有効な手法といえる。
これらの手法を現地調査及び周辺不動産会社へのヒアリングと合わせ利用すると、より正確な市場把握をすることができる。

(2)賃貸需要を生む施設の有無
賃貸住宅の運営をする場合、そこに住むであろう入居者の見込みが立たないと成立しない。
満室時表面利回り20%の地方物件を買ったという投資家からの相談案件では、唯一の需要先であった近隣工場の移転に伴い事業の破たんを迎えた。彼は資本改善や賃料値下げといった様々な施策を検討していたが、肝心の需要が対象地域になければ効果は無いということを知ることになった。
立地の選定には、賃貸需要を生み出す施設と複数の代替需要の有無が重要。施設には駅や港、空港といった交通機関以外にも、官庁街、オフィス街、大学、工業団地、大規模商業施設、軍の基地などさまざまなものが考えられる。又、その施設がもつパフォーマンスにも注目すべきである。駅であれば一日の乗降客、工業団地であれば構成企業の産業の動態。大学も学生数の多寡や、人気度など、様々な要因が考えられる。
ここで必要なデータは、電鉄会社・企業・大学のホームページ、商工会議所のサイトなど。あるいは、マクロ的な指標であれば経産省のHPなどから調べることができる。

(3)年収と家賃のバランス
国交省の調査によると入居者が希望する家賃負担割合は年収の20%、また民間で行われた同様の調査では月収の30%程度の家賃負担が理想であるという結果が出ている。
全国の賃料を規準とした賃貸住宅市場の特徴を見ると、他地域より2割ほど高い東京周辺を除き、おおよそ5万円前後の賃料が単身者向け物件では需要が中心であるといえる。首都圏入居者意識調査(21C住環境研究会+リクルート社)では、入居者の8割は20~30代の独身社会人となっているが、同世代の年収がおよそ300万円前後という厚労省の調査結果を踏まえると300万円×20%=60万円・・・@5万円/月と計算することもできる。当該地域や想定入居者層の収入と物件賃料のバランスが取れているかという点にも着目すべきである。

(HOME'S不動産投資 猪俣淳の不動産投資コラムより引用)

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