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2014年07月24日
マネーの達人、公認会計士・税理士の山田真哉さんに旬のマネートピックについて聞くコラム。今回のテーマは「相続税対策」です。2015年から相続税の課税が強化されるのを控え、最近、相続税対策として賃貸住宅や賃貸併用住宅を建設する人が増えているようです。そもそも、賃貸住宅を建てるとなぜ相続税対策になるのでしょうか。その仕組みについて、山田さんに聞いてみました。
■優遇される不動産
――6月30日付の日経新聞1面に「賃貸住宅、建設が急増」という記事が出ていました。生命保険会社などの投資マネーに加えて、個人が節税目的で賃貸住宅を建てるケースも増えているようです。
「お金持ちは現預金、株式、土地、不動産などいろいろな資産を持っていますよね。現預金や株式(注1)は基本的にそのときの時価と相続税の評価額が近い金額になるのに対し、現在の仕組みでは、土地や不動産は実勢価格がそのまま相続税評価額になるわけではありません。評価額を少なく計算できる、つまり優遇されているんです」
――どのぐらい優遇されているんですか。
「相続税や贈与税を計算する際の土地の評価には『路線価』が使われます。毎年7月1日に国税庁が発表しますよね。この路線価は市場価格の70~80%になっています。固定資産税を計算する固定資産評価額はさらに低くて、市場価格の6割程度になっているんですよ」
――市場価値が同じ1億円の遺産でも、内訳が株式や現金だけという場合と、ほとんどが土地・不動産という場合では、支払う相続税の額がかなり変わるわけですね。
「そういうことになります」
■家制度の名残
――なぜ土地や不動産は優遇されているんですか。
「いくつか理由はありますが、一つは家制度の名残があるからだと思います。相続税のせいで先祖代々の土地が受け継がれなくなったら、家制度が崩壊してしまいますから。それから、国土を守るという目的もあると思います。税金が高いから土地を売ります、となって、それをどんどん外資系が買うようになったら安全保障上の問題が生じます」
――以前、「親孝行にも税金が 一筋縄でいかぬ相続税」の回で、親と同居していれば相続の際に土地の評価額が8割減額される「小規模宅地の特例」について伺いました。
「この特例はまさに家制度を守るためのものといえるでしょう。ですから、仮に売ったら1億円になるというような土地の相続税評価額は、先ほどの路線価で計算するのでまず、約70%の7000万円になり、さらに小規模宅地の特例が使えるなら8割減額、つまり1400万円が課税価格になるわけです」
■不自由な土地=評価減
――なぜ賃貸住宅や賃貸併用住宅を建てることが相続税対策になるんでしょうか。
「もし更地であれば、そこを駐車場にしようがコンビニエンスストアを作ろうが所有者の自由ですが、賃貸物件が建っている土地というのは自由がきかないですよね。賃借人が住んでいる以上、土地の所有者は好き勝手できません。不自由な分、土地の評価額が下がるわけです。建物の評価も建設費の半分ぐらいまで下がります」
――確かに賃借人がいる土地を好き勝手しようと思ったら立ち退き料を払ったり、いろいろお金がかかりますね。
「そうです。その分の『手間賃』を評価額から減額していると考えればわかりやすいのではないでしょうか。法律的にいうと、アパートなどを建てて賃貸経営をすると、賃借人の借地権と借家権が生じるため、相続税の評価額が下がるんです」
――どのぐらい相続税を下げられるんでしょうか。
「実際の計算式は結構、複雑です。土地の評価額がどのぐらい減少するのかを計算するには、借地権の割合、借家権の割合、賃貸割合をかけ算します。建物の評価減を計算するには借家権の割合と賃貸割合をかけ算します」
「路線価で1億円の土地に1億円を投じて賃貸住宅を建てたとしたら、どのぐらい評価額が下がるのかを計算しました。借地権割合は70%、借家権割合は30%とします。先ほども言った通り、建物は固定資産税評価額になるので、仮に1億円で建てた建物であっても、評価は6割ぐらいになります。自分の土地・建物の価額から“他人の権利分=手間賃”を引いたのが、最終的な評価額です」
■建物部分は半分ぐらいの評価に
――この計算によると、2億円の財産の評価額が1億2000万円ぐらいになるわけですね。相続税の税額もだいぶ小さくなりそうですね。
「特に建物部分の評価減が大きいですね。もし1億円を現金で持っていたら、相続税を計算する際の評価額はそのまま1億円になりますが、賃貸住宅を建てることによって半分ぐらいの評価額に減らすことができます。その結果、国に納める相続税額は、遺産の規模にもよるのですが、人によっては4分の1になったりします」
――ただ……このケースは賃貸割合を100%で計算していますが、もし賃貸住宅を建てたものの、まったく借り手がつかなかったとしたら、100%がゼロになり、評価額をまったく減らせないことになりますね。
「そこが賃貸住宅を建てる注意点でもあります。建物分の1億円を借金ゼロで自己資金から出せるならいいのですが、いま賃貸住宅を建てている人の大半は土地を担保に借金して建物を建て、賃料収入で返済しています。そうなると、9割ぐらいの部屋は常に埋まっていないと、返済が苦しくなるでしょうね」
――相続税対策として賃貸経営に乗り出したものの、うまくいかなければ逆に相続人である子ども世代の負担になる可能性もありそうです。
「僕のお客さんの中にもアパートやマンションを経営している人がいますが、エレベーターが壊れたとか、電気設備の修理が必要とか、しょっちゅう費用がかかっています。また、新しい賃貸マンションは次々に登場するので賃料競争は激しいですし、街が寂れたり、近所の大学が移転したりしてしまうと、借り手が全然見つからなくなるという事態もありうるわけです。賃貸経営は甘くみないほうがいいでしょうね」
■相続税対策は総合的に
――相続が発生したときに借金が残っていたら、相続財産の評価はどうなるんでしょうか。
「一般的には、プラスの財産から借金、つまりマイナスの財産を差し引いた金額が評価額になります。ただ、マンション経営などの場合、借金をする際に団体信用生命保険に加入することが義務付けられることも多いので、債務者が亡くなれば、借金はなくなります」
――そういう意味では子ども世代に借金が残る心配はないわけですね。
「そうですね。ただし、プラスの財産からマイナスの借金分を差し引かないので相続税額は高くなりますし、何よりも、賃貸経営は引き継がれますから、うまくいっていない場合は、子どもたちの重荷になる可能性があります。古い賃貸物件を引き継いだものの、改修費用を捻出できずに経営がじり貧になって、続けるほど赤字になるというケースもよく見ます」
――相続税対策として賃貸経営を考えている人にアドバイスはありますか。
「相続税対策として現預金を減らして賃貸経営を始めると、相続財産が土地と建物だけという場合があります。すぐに換金できる財産がないので、相続税対策をしたつもりが、子どもが相続税の支払いで大変になるということにもなりかねません。不動産だけでなく、生命保険や信託などを組み合わせて相続税対策をする必要があるでしょう」
(注1)上場株式の評価額は(1)相続の開始があった日の終値(2)相続の開始があった月の終値の月平均額(3)相続の開始があった月の前月の終値の月平均額(4)相続の開始があった月の前々月の終値の月平均額――のうち最も低い価額になる。
(日本経済新聞Webより引用)
所有している土地に賃貸住宅を建てたらどのくらい評価減になるか