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2014年12月12日

投資市場、視界良好 高まる日本への期待

市況に陰りが出始めている実需不動産に対し、旺盛な取引が続いているのが投資市場だ。
東京オリンピック開催など明るい話題がけん引する中、円安の影響で海外投資家が更なる熱い視線を日本に向けている。
また、国内でも「サラリーマン投資家」を始め、「将来の備え」のための底堅い需要がある。
価格上昇期に入った今も、その勢いは止まらない。

個人の不動産投資ブームが続いている。
東京23区内の中古ワンルームの販売を手掛ける日本財託によると、「大きな変化はやはりアベノミクス。これを機に問い合わせが急増した。
それまで月に40件ほどだったものが、倍の80件に増えた。
その水準が今も続いている状態だ」という。
更に東京オリンピック開催決定や、山手線の新駅計画といった話題も登場し、注目度が高まっているようだ。

主な投資家層は40代後半のサラリーマン。投資セミナー経由で購入に至るケースが大半だ。
先行き不安を背景に、20代や30代の若年層の割合も年々増加している。
最近は少し変化があり、「この1年くらいは、税理士やファイナンシャルプランナーからの紹介が増えてきた」(同社)。
これまで販売件数の7~8割がセミナー経由だったが、最近は4割近くがこうした紹介によるものだという。来年1月から相続税が強化されることに伴い、その対策として不動産投資に動いている様子がうかがえる。


■販売実績が過去最高

投資用新築マンションと1棟アパートの販売を手掛けているシノケングループは、14年12月期第3四半期決算で過去最高の販売実績を更新した。
累計で、新築マンションは457戸(前年同期431戸)、アパートは124棟(同110棟)。「将来不安からくる備えの意識の高まりを感じる」とグループ戦略本部の相田健一郎部長は語る。

しかし、価格の面から見ると、決して良好な環境とは言えない。
相田氏によると、05年に2000万円だった投資用新築マンション価格が、リーマンショック前のミニバブル期に2500万円前後に上昇。
その後、価格は一旦落ち着いたが、安倍政権による経済対策や五輪決定、建築費高騰などで現在は2700万円程度の水準だという。
賃料はそれほど変わっていないため、価格の上昇は利回り低下につながる。
日本財託でも、「仕入れ価格が上昇しているからといって顧客に転嫁するわけにはいかない。
仕入れ競争も厳しい」と話す。


■価格上昇してるが…

ミニバブル期は確かに全体的な経済環境が良く、今後の日本経済に期待感が持てる状況下での「価格上昇」だった。キャピタルゲインを狙った取引も生じたようだ。
しかし、現在の価格上昇はコストアップが要因だ。
所得環境の改善や経済の先行きが不透明な中での価格上昇が、市場に良い影響を与えるとは考えにくい。


■「将来不安」への備え

「そういう状況だからこそ、備えの意識が更に高まる」とはシノケングループの相田氏。
同社の顧客の半分は30代で、そのうちの7割は30代前半だという。
「年収でいえば、480万~600万円の層が最も多い。
将来的な収入増がそれほど期待できず、受け取れる年金もわずかなもの。(住宅ローンを組みやすい)会社員という立場を生かし、早めに資産形成しようという考えのようだ」(同氏)。
数年前からの呼称である「サラリーマン投資家」。
十年ほど前の「余力のある上場企業の課長・部長クラス」といった顧客層が、完全に「サラリーマン」へとシフトしたと言える。

「将来不安」による顧客が多いだけに、「将来への安心感」を提供することも重要。新築には「家賃保証」の強みもある。「安心・安全」は、実需だけでなく投資の世界でも重要なワードとなる。

また、賃貸市場についても変化の兆しが出ている。
日本財託によると、この1年は退去から次の入居者が決まるまでの期間が短くなり、稼働率も上昇した。「賃貸市場も徐々に良い方向に向かい始めているのでは」(同社)と期待を寄せる。


■海外投資家「大口取引」増加

昨年来続く、アジア圏の投資家による対日不動産投資。
仲介各社も多言語の翻訳が可能なウェブサイトを開いたり、現地に事務所を設置したりと態勢整備に努めている。中でも、専門部署を構えて相次ぎ施策を繰り出しているのが東急リバブル。
現在、現地企業と提携するケースを含めて上海、台湾、シンガポール、香港に拠点を置く。
12月初旬には、リテール部門でも海外投資家向けの仲介事業を強化。
外国人スタッフを採用した上で専用窓口を新設し、国際会計事務所と提携して税務コンサルティングができる環境も整えた。

同社の取引仲介は個人富裕層が中心で、台湾人が約7割。
直近では、リーマンショック前に多かったという韓国の投資家も、円安を背景に再び動き始めているという。

投資対象は店舗や商業ビル、レジデンス、オフィスなどの収益不動産だ。
高い投資意欲は継続しており、これに対する売り控えの動きもあって、東京23区内を中心に物件が減少気味。未竣工の物件に対する投資も増え始めているという。
こうした状況下で、成約価格の上昇に伴い利回りも「以前の7~8%台から4~5%台に低下している」が、「円安に振れているので、海外のマーケットから見れば日本の不動産はまだ割安で魅力的」。同社ソリューション事業本部の森茂雄海外営業部長が、近況を語る。

森部長は更に、投資傾向の変化として「大口取引の増加」を指摘する。
「従来の『1億~3億円』から、最近は『10億~30億円』の取引に移行している。
ゼロが一つ多い」。背景として森部長は、投資家が日本での投資経験を積むにしたがい「慣れてきて、より大きなリターンを求めるようになった」とみる。


■保有期間は3~5年

一方で海外投資家たちは、出口戦略をどう描いているのだろうか。
森部長によると、「国によっても違うが、保有期間は3~5年程度ではないか」という。
「一般的な見方として、東京五輪の前に売却するのが賃料収入、キャピタルゲインの両面でメリットが大きい。(五輪前年の)19年くらいに、売り出されるのではないか」と話す。
同社ではその際の仲介も視野に入れ、購入後の管理もメニューとして用意している。


■中堅デベも海外に目 「東京五輪」大きな後押し

中堅ディベロッパーでも、海外投資家を取り込む動きが活発化している。

不動産再生事業などを行うアルデプロ(東京都新宿区)はこのほど、東アジアを中心とする海外投資家の日本への旺盛な不動産投資需要に対応するため、台湾に現地駐在員事務所を設置することを決めた。
荻坂昌次郎執行役員は、「台湾大手金融機関とのネットワークがあり、その活用を見込んで事務所設置を決めた。仲介も行うが、アジアの投資家が好む新築を購入し、リーシングを行い稼働率を上げて販売する形を中心にする」と話す。
台湾投資家への販売も視野に入れ、今回新築7物件を取得。いずれも利回りは5%程度だ。

また、アジア投資家への販売を模索していた投資用ワンルーム開発のアーバネットコーポレーションでは、台湾法人から1棟での購入依頼があり、今回合計2棟を売却した。服部信治社長は、「アジア各国の不動産は今後が読みにくい状況であるのに対し、日本の不動産は東京オリンピック開催まで下落しないのではといった安心感があるようだ」と話す。


■魅力度増す日本

海外投資家にとって、「東京オリンピック」は大きなキーワードのようだ。アルデプロの荻坂氏も、「情勢が安定しているなどカントリーリスクの少なさといった元々の魅力に対し、東京オリンピックの開催決定やアベノミクス効果、円安などがきっかっけで日本に注目が集まった」と語る。また、建物の品質の高さに驚きを示す投資家も多いという。
そして、高額エリアについては、「六本木や代官山などの有名なレジデンスの購入者のほとんどが外国人投資家で、現金で購入するというイメージ」(荻坂氏)と説明する。

「海外投資家は、特に東京都心5区の物件に関心が高いので、そのエリアでの取得を強化する」とするのはアーバネットの服部氏。一方で、「海外投資家動向は、急激に変化する可能性がある。
主力は今まで通り国内販売とし、一部を海外マーケットに向ける方針」と慎重さも隠さない。

福岡エリアの有力不動産会社である三好不動産は、外国語表示のホームページ作成や上海に事務所を設置するなど、以前から外国人の集客を積極的に行っている。

同社によると、「ここ1年間で、外国人による日本の投資物件購入は活発化している。
11月は通常よりも多い5物件の契約があった。上海や香港、シンガポールの投資家が購入している。香港では物件価格高騰し、利回りが低下していることに加え、最近は円安などが影響し日本の投資物件の購入が活発になっているのでは」とする。

(住宅新報Webより引用)

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