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2014年07月08日
低金利の時代が長く続いていることもあり、資産運用の手段として株や債券ではなく、不動産を選択される方が増えている。中でもワンルームマンションへの投資は、比較的少ない資金で始められる不動産投資として人気も高い。
所有住戸を借りている入居者がいれば、安定的に家賃収入を得ることができる。しかし、当初入居者がいたとしても、将来的に入居者が退去し、住戸が空室となれば家賃収入は入らなくなる。また、マンションの建物が経年により老朽化が進んでいけば、家賃収入の下落も考えられる。
■投資用の分譲マンション5戸を所有するケースで考える
豊橋さん(仮名)は、将来的に家賃収入が生活費の足しになればという思いから、10年ほど前からマンション投資を行っている。現在、ワンルームマンションを中心に投資用の分譲マンションを5戸所有しているが、入居状況が芳しくなく、家賃の下落も続いたため、全体の収支状況は赤字。改善も見込みにくいため、マンジョン経営から撤退することも考えている。
しかし、投資用マンションを含め、不動産の売却にあたって焦りは禁物である。売り急げば急ぐほど、足元を見られてしまい、相場よりも安く買い叩かれてしまう可能性が高くなる。
そのような事態を防ぐためにも、ローンの借り換え、あるいは親族からの援助なども状況に応じて利用しつつ、腰を据えて売却を進めていくことも大切である。また、全体で赤字が続いていると、マンション投資すべてを投げ出したくもなるが、収支が黒字、あるいは黒字化が見込める物件などについては、当面経営を継続することも検討したい。
今回は、豊橋さんの事例をもとに、収支が赤字化してしまっている投資マンションについて、どのように選別し、売却を進めていくかについて考えてみたい。
■当初の家賃収入がずっと維持される保証はない
図表1は、豊橋さんが所有しているマンションの概要および経営状況である。物件1~5の5物件のうち、毎月の収支状況がプラスなのは物件4と物件5の2物件にとどまる。しかも、過去1年間でみると、物件によっては空室も発生していたため、実際には図表1でみるよりも収支のマイナスは大きかったのである。もちろん、物件1~3についても、購入当初はプラスの収支だったが、他物件との競合などによる家賃の下落のために、現在は赤字となってしまっている。
このように、購入当初のプランでは収支がプラスになっていても、競合物件の出現、あるいは老朽化などによって収支が赤字になってしまうことは容易に起こりうる。また、同じ入居者がずっと住んでいてくれればよいが、いったん退去してしまうと、次の入居者が入居するまで数カ月、場合によっては半年以上の空室期間が生じかねない。当然、その間の家賃収入はゼロである。
投資用マンションを購入する際、販売業者などが示す収支プランの中には、当初の想定家賃で入居がずっと続くことを前提としたプランが示される場合がある。しかし、実際の賃貸経営においては、家賃の下落や空室の発生によって家賃収入が低下するリスクを常に抱えている。家賃の下落によって収入が減少するリスクが家賃下落リスクであり、空室の発生によって収入が減少するリスクが空室リスクである。
マンション投資に際しては、こういった家賃下落リスク、あるいは空室リスクについて、「リスク」ではなく、当初からある程度想定に入れたうえで検討することが必要である。豊橋さんの場合も、当初の収支プランを見たところ、多くの物件において、当初の家賃で空室がほとんど発生しない限り黒字化が困難なプランであったため、もう少し余裕を持った計画にすべきであったと考えられる。
■売却を急いで買い叩かれることのないように
豊橋さんはマンション投資全体での収支がマイナスに転じた以降も、家賃上昇、あるいは返済後の収益改善を期待してローンの返済を継続し、マンション経営を続けていたが、不動産業者などからの話では家賃上昇による収支改善は見込みにくいとのことであり、むしろ時間の経過とともにさらに下落する可能性が大きいとのことであった。
また、生活費の面においても子供の大学進学などにより余裕がなくなりつつあり、今後のローンの返済が困難になってきたことから、マンション売却によるローン完済を考えるようになったのである。
豊橋さんの奥様は、マンション投資から完全に手を引いてすっきりしたい気持ちが強く、5物件全部を早期に売却したい意向であったが、すべてを売却しても、ローン全額を完済できる金額には達しない。また、不動産に限らず、急いで売却しようとすると、足元を見られて買い叩かれ、さらに低い価格でしか売れなくなってしまう。
無駄に引き延ばす必要はないが、ある程度の「売却目標額」を決めて、あまりに低い価格で売り急がないようにしたい。豊橋さんは、全5物件の経営状況などを勘案しながら、売却する順番もある程度考えつつ長期的に売却を進めることとした。
■収支改善が困難な物件は優先して売却の検討を
それでは図表1の5物件のうち、いずれの物件を優先的に売却すべきであろうか?
図表1からは、物件1~3の3物件が現状の家賃収入から「賃貸支出」を賄えていない。ここでいう賃貸支出とは、投資したマンションの賃貸経営を行うにあたって生じる支出のことである。毎月かかる支出としては、ローン返済のほかに、管理費、修繕積立金、業務委託費などがある。また、臨時にかかる支出としては、入居者の入退去時の内装費用や入居者募集費用などがある。不動産を取得・保有することにより、所得税、固定資産税、都市計画税、不動産取得税などの税金を支払う必要も生じる。
収支マイナスの状況が続くと、その分家計からの持ち出しが必要となるため、今回豊橋さんは、まずは収支状況の悪い物件の売却を優先し、マンション経営全体の収支改善を優先することとした。
しかし、収支がマイナスの物件であれば、いずれも売却を検討した方がいいか、というとそうもいかない。物件2、物件3は、収支はマイナスであるが、不動産業者で査定してもらった売却可能価格よりもローン残高のほうが高く、評価損が発生している状態である。これでは売却してもローンが完済できないことになる。
当面は、物件1の売却を優先的に検討することになるであろう。物件1であれば、売却可能価格のほうが借入金残高よりも高いために物件の売却によって借入金も完済することができる。
■諸費用を考慮してローンの借り換えを慎重に検討する
それでは、残りの物件2、物件3はどうするか? 収支は赤字、評価損も発生しているために、とりあえずローンを支払い続けるしかないのだろうか?
もう一度、図表1に戻ってみよう。物件3のローン金利のところを見てほしい。固定4.5%となっているが、いくつかの金融機関に持ちかけてみたところ、s下の図表2のような条件で借り換えが可能であることが分かった。固定・変動金利いずれの場合でも、当面の収支はわずかではあるがプラスに改善する。
評価損の発生により、現状単体で物件3を売却することは困難であることから、返済を継続するのであれば、少しでも持ち出しを少なくする方法を積極的に検討したい。借り換えについては金融機関によってできる場合もあればできない場合もあるし、また、可能な場合でも金利などの条件は金融機関ごとに大きく異なってくる。
できるだけ多くの金融機関に打診して、各金融機関が提示する借り換え条件を比較検討すべきであるが、その際、登記費用、ローン手数料、保証料などの諸費用についても考慮に入れたうえでの比較検討を行いたい。
豊橋さんは打診した金融機関の中の一つからの借り入れで借り換えを行い、物件3については収支を黒字化することに成功、当面は賃貸経営を続けることにした。
■親族からの贈与・借り入れなども活用したい
収支マイナスの3物件のうち、物件1は早期の売却を検討し、また、物件3については借り換えによって収支を黒字化して、返済を続けることになった。そして、物件2については、売却することもできず、また、借り換えなどによって収支を改善することもできず、赤字のままローン返済を続けることになるのであるが、現状を少しでも改善する手立てはないのだろうか?
全くないわけではない。家計の状態がぎりぎりで、物件2の収支マイナスの支払いを続けることも困難な場合、事情を話して親族から援助を受ける、ということも考えられる。物件2の場合であれば、現在の評価損が約300万円なので、約300万円を負担してもらえれば売却が可能となる。また、物件1の売却益の一部を物件2の売却損に補てんできれば、親族からの負担額はもう少し少なくてすむ。
援助を受ける側からみれば、贈与が最も負担軽減となるが、この場合には贈与税が発生するので注意したい(図表3)。贈与税は、個人から財産をもらったときにかかる税金で、会社など法人から財産をもらったときは贈与税ではなく、所得税がかかる。贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、一定の要件に該当する場合に相続時精算課税を選択することができる。暦年課税の場合は年間110万円までは基礎控除が適用される。借り入れの形をとる場合でも、場合によっては贈与とみなされ、やはり贈与税がかかってしまうこともあるので、実行の際には専門家である税理士のアドバイスを聞いたうえで行いたい。
また、借り入れの形をとる場合は、親族への返済方法しだいでは収支の改善にならない場合もあるので注意したい。例えば物件2の売却損300万円を物件1の売却益100万円と親族からの借り入れ200万円で補てんした場合、親族に毎年20万円ずつ返済すると当面の収支は悪化してしまうことになる(物件2の経営を続けた場合の収支マイナスは年間約14万円)。
親族からの援助は、現在のローン支払いも困難で、返済資金の調達に消費者ローンなどから新たに借り入れてしまうぐらいであれば、活用の可能性を探りたい。しかし、以上説明したように税金の問題、収支改善の問題もあるため、やはり「最後の手段」程度に考えておいた方がよいであろう。ローンの返済が困難になった場合は、まずは借入先の金融機関などに現状を率直に相談したい。場合によっては、返済期間の延長などの対応策をとってくれる場合もある。
豊橋さんは、妻の父親から援助の話を持ちかけられたが、現在のところはまだ多少の蓄えも残っていることから、物件2についてもしばらくは賃貸経営を続け、借入金の返済も続けることにした。
■黒字物件は収支状況などをにらみながら売却時期の検討を
物件4、物件5については、収支状況もプラスで推移しており、当面は現状のまま経営を継続することになるが、賃貸不動産の市場動向や金利の推移には常に注意を払っておきたい。
物件4、物件5いずれも収支差のプラス額はわずかである。物件4については借入金の金利が2年間の期間固定金利であり、今後の金利の推移いかんによっては、収支がマイナスに転落してしまうことも多いにありうる。また、いずれの物件もまだ築年数が浅く、今後年数の経過、あるいは市場の動向によっては家賃を下げざるを得ない状況も出てくる。
物件の実際の管理業務は管理会社に委託されるため、オーナーとしてできることには限りがあるが、それでも、物件の老朽化を遅らせ、家賃の下落を防ぐためにも、マンションの管理状態には常に目配せをしておきたい。
さらに、物件4については、金利の推移に注意しつつ、収支がマイナスに転じる前に売却することも検討すべきであろう。幸いなことに、図表1より現時点においては売却可能価格がローン残高を上回っている。当然、売却可能価格も時間の経過とともに変化するため、売却時期については金利の推移によるローン返済額の変化および物件売却可能価格の変化をにらみながら検討したい。豊橋さんも、物件4については時期を見て売却の検討を進めることとした。
■家計全体の収支状況も考え合わせて
以上、豊橋さんの所有する5物件について売却の是非、手順についてみてきた。当面は物件1の売却を進め、その後時期を見ながら物件4についても売却を検討、物件3についてはローンの借り換えを進めることとしたが、これらの計画を進める中で、賃貸経営以外の部分での豊橋さん一家の家計状況についても常に注意しておきたい。
子供の大学在学中などで支出も多く、家計が厳しい状況のときには賃貸経営の収支についても厳しめなプランニングが必要であるし、また、その逆もしかりである。
賃貸経営独自での収支ももちろん状況把握には必要であるが、一家全体の家計収支状況といった視点から、賃貸経営以外の家計状況も把握し、それを踏まえたうえで賃貸経営における資金計画をプランニングしたい。
(SAFETY JAPANより引用)