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2017年04月19日

過熱するアパートローン ―金融機関と住宅メーカーに警鐘 事業性の見極め必要―

金融機関が個人による貸家業に融資する資金、いわゆるアパートローンの貸出残高がこのところ増え続けている。それにより、貸家の着工が増加しており、貸家の着工戸数が全体の半数近くとなっている。
理由は相続税対策やローン金利の低下にあるが、新築の貸家が増えることで空き家が増加しているほか、オーナーが求めていた家賃収入ラインを下回り、事業継続に暗雲が広がるケースも出てきた。
金融庁も実態調査に乗り出すなど問題化しているアパートローンについて追った。

アパート向け建設融資(アパートローン)の勢いが止まらない。国土交通省が3月に発表した「民間住宅ローンの実態に関する調査」によると、15年度に国内の金融機関が行った賃貸住宅向け新規貸出額は、3兆6653億円で、前年度比8.0%増となった。また、日本銀行の貸出先別貸出金を見ると、16年12月末の「個人による貸家業」の期末貸出残高が22兆1668億円で、前年度比4.9%増と拡大している。

この背景にあるのが、相続税対策だ。
15年の税制改正により、相続税の基礎控除額が引き下げられたことで課税対象者が広がった。
以前のような「よほどの金持ちでないと、相続税なんて払うことない」という状況から、普通のサラリーマンで退職した層にまで対策が必要となるケースも出てきた。また、ローン金利の低下も要因の一つだ。
日銀のマイナス金利政策により、金融機関もいい貸出先を欲するようになった。


地銀が積極的

特に、都市銀行に比べ、財政基盤などがぜい弱な地方銀行がアパートローンに積極的な動きを見せるようになった。先に上げた国交省調査によれば、賃貸住宅向け新規貸出額上位金融機関を見ると、1位が地方銀行で1兆5762億円、2位が信用金庫で8025億円、3位が都市銀行、信託銀行などで5586億円と地銀が突出している。一概には言えないが、適地とは思えない土地でのアパート建設が進む一因と考えられる。

アパートローンの利用者は土地を所有している富裕オーナーだ。
大手住宅メーカーなどがこうした富裕オーナーに照準を当て、アパート建設に走らせている。
相続税の節税になるし、金利も低く、大きな持ち出しもなく建設することも可能だ。
これにより、貸家の着工が増加。16年の新設住宅着工戸数は全体で96万7237戸。
うち、貸家は41万8543戸で、前年比10.5%増、5年連続の増加だ(国交省新設住宅着工戸数より)。

現金で持っているよりアパートを建設したほうが、相続税評価額でおよそ半分くらいに下がる。
しかも建設費はローンで貸出金利も1%くらいだからオーナーの懐はさほど痛まない。また、金融機関も富裕オーナーは他にも土地を持っているケースが多いため、融資を判断するのも比較的楽で、当該のアパート事業の可否ではなく、オーナーの財産の評価で担保価値を判断する。


オーナーにしっかり説明を

しかし、ここに来て「あまりに過熱している」(金融庁)との声が大きくなってきた。
一部地域で賃貸住宅の空室率が高まっており、同庁は金融機関に対し、融資審査で担保だけでなく、事業自体の妥当性の評価などを勘案することを要請した模様だ。

 ている。16年秋、賃貸住宅管理業者登録規程の見直しの中で国交省は、サブリース契約において、「家賃保証契約に関する十分な説明」をするよう管理業者に求めた。
家賃および将来の家賃変動に関する諸条件の明記も含まれる。
オーナーと供給サイドがサブリース契約を結ぶと、一定期間の家賃収入を保証する仕組みを採用しているケースがほとんどだが、その期間や家賃の減額についてトラブルになる。

日本賃貸住宅管理協会のサブリース事業者協議会では、これまでもサブリースの重要事項説明書で、将来の契約条件の変動に係る条件の項目を明確に記載するなどしてきたとしている。
サブリース業者が、事業者とはいえ理解が不十分なことが多いオーナーとの関係を密にし、しっかりとした対応が望まれる。

アパートローンにおける金融機関、オーナー、供給サイドのあり方や、行政の対応について、今後更に深掘りをしていく。訴訟となっているケースや事業運営に窮しているオーナーなどについて取材し、あるべき業界のあり方について提言していきたい。

(住宅新報Webより引用)

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