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2014年01月07日

女性脳的な投資”のススメ―少額でも楽しく使うための成果を確実に得る

■投資に絶対的な方法はないが……

ネガティブな材料が出るたびに危うげな空気を醸しだすものの、株式市況は総じて堅調だ。こうした“起き上がり小法師”さながらの印象を見せつけられると、そして政府の「貯蓄から投資へ」のスローガンをあちらこちらで見聞きするようになると、株や投信での運用を「始めてみたい」「再び行いたい」「もっと力を入れたい」と思う方も少なくはないだろう。

間もなくNISA(少額投資非課税制度)がスタートする。確定拠出年金の拠出増額や、新たな私的年金制度の創設(財務省・金融庁の金融・資本市場活性化有識者会合での草案)も検討され始めた。まさに“時はいま”の様相を呈している。

ところで、筆者自身は長いこと好んで投資を続けているが、投資が必要だと世間にあまねく説くつもりはないし、投資を勧奨するスタンスではない。資産運用への関わり方は個々の家計状況やライフプランに基づくべきものであり、何よりその人の価値観による。

だが、もし、これから投資を始めたい、相場の世界に戻りたい、さらには資金を投入したい、という方がいれば、少しでも長く、安心し、かつ安定的に行うためにも、過度なストレスを抱え込まず、のめり込み過ぎないのがベターであると思う。

そこで、“女性脳的投資”なる試みを提案してみたい。投資手法は数多く存在するが、相場を相手にする以上、成功するための唯一無比のものを決め打ちすることは難しい。あくまでも選択肢の一つとしてご参考頂きたい。


■30~40代の女性は株式投資の認知度が低い?

とはいえ、なにも男性より女性が投資に適している、成功している人が多い、と言いたいわけではない。

実際、男性と女性でどちらの投資家が多いか?と問われ、直感的に「それは断然女性だ」と答える方は少ないだろう。我々が持つ印象としては、依然、投資はどこか男性っぽいものだ。

株式投資に限定したものだが、東京証券取引所もこんなレポートをまとめている。

これによると30代から40代の女性層が特に株式投資への認知度が低いらしい。また、この層が抱く株式投資のイメージは、「難しい言葉を並べたてられてよく分からないが、たくさんお金がある、私とは縁遠い人が朝から晩まで売買を繰り返し、結果財産がなくなるほど大損することもある」とのことだ。中々興味深いレポートである。

アンケートや集計等の類は、その集計母数や属性の違いでどこまで全体を反映できるものなのか判断が難しいところだが、おおむねは、このレポートの通り、投資家層は男性、しかも中高年層に多く、女性は相対的に少ないのだろう。

しかし、投資を多く手掛けている層のほうが、必ずしも投資に適しているというわけではない。性別や年齢の違いで単純に適正か否かを決めつけることはできない。


■女性に多い傾向、男性に多い傾向

男脳・女脳という区別をご存知だろうか。ベストセラー本を思い浮べればピンとくるかもしれない。脳科学者の茂木健一郎氏も、男女差の前に個人差があるので明確な境はないとしながらも、比較的男性に多くみられる傾向と、どちらかというと女性に多い傾向とで男脳と女脳を説明できるとしている。

ネットで検索すると、どちらの傾向により近いかを判定するテストがいくつもあるのでぜひお試し頂きたいが、おおむね以下のような項目が共通して並んでいる。

□友人との会話で
 (1)話題が頻繁に変わり、話し終えた後で満足感がある
 (2)一つの話題について詳しく話すことが多く、話し終えた後も考えることがある
□テレビをつけながら雑誌を読むと
 (1)テレビの内容もある程度覚えている
 (2)雑誌に集中してテレビの内容を覚えていないことが多い
□買い物の仕方
 (1)安売りの時に買い込むことが多い、店内を回りながら必要であれば買うことが多い
 (2)表示を念入りに読み値段を比較する、最初に買うものを決めてから探すことが多い
□人生の大きな選択の時
 (1)一人で悩まず誰かに相談して決める
 (2)色々な情報を集めて自分で決める

上記はすべて(1)は女脳、(2)は男脳の特徴となる。性別に関係なく(1)を多く選んだ方は女脳が強いということになる(性格が女っぽいという意味ではないらしい)。例えば買い物をする時、女性は感覚買いでプロセスを楽しむこと(shopping)が比較的多く、男性は目的買い(buy)が多いらしい。これは女性に女脳が強く表れやすい傾向の結果だという。

また、女脳は概して一つのことに集中できないが複数のことを同時にこなせ、好き嫌いの感情で動き、感情的であるが割り切りも早く、困った時は人に尋ね、情報は人づて(口コミ)で、人の評判が気になり、小さな変化に敏感で、目の前の現実に関心が高い傾向があるという。

一方の男脳は一度に一つのことしかできず、熱中してのめり込み、コンプリート(コレクション)好きで、後々まで尾を引き、理屈やエビデンス(根拠)を伴わないことに抵抗を覚え、人の話を聞かず独断的で、困った時でも自力で解決しようとし、小さな変化には気が付かず、大きな夢を見る傾向があるようだ。

さて、あなたはどちらの傾向により近いだろうか?

ところで、男脳と女脳のどちらが優秀かを論じる話を聞いたことはない。仕事でも生活でも、異なる感性を持つ人たちが交ざり合うところがよいなのだろう。投資の適正についても同じだ。各々に長所短所があり、どこを目指すのかで適した感性は異なり、その結果、投資成果も変わってくるのかもしれない。

さはあれ、「女性脳的投資」が無難な方法であると考える。いささか強引であるが三つほど根拠を挙げてみよう。


■投資の目標は明確に持つ

目標とはゴールである。これを持っておくことが何より大切だ。「そんなわかりきったことを」との声が聞こえてきそうだが、果たしてどうだろうか。

資産運用とは、要するに「今使えるお金を将来使う時のためにとっておく」という行為である。それは貯蓄も投資も同じだが、より目標を定めておく必要があるのは投資だろう。「使う当てはないけどとりあえず」という理由で貯蓄をしても問題はないが、投資の場合ではいささか不安だ。

「何にそのお金を使うのか」という目標が明確であれば、必然的に投資を終える換金時期や投資金額も明確になる。そして、その目標がより現実的なものであれば、投資にのめり込み過ぎて、投資に回す資金やかける時間を無意味に投入する可能性も、投資において致命的な“負けを嵩む”可能性も少なくなる。

あなたは投資の目標として、換金後の具体的なイメージをどこまで持っているだろうか。例えば「投資目標は旅行資金だ」でも良いのだが、さらに「誰とどこに行き、どんなことをしたいか」、そして「その時の自分がどれだけ楽しいか」までをイメージとして膨らませればより具体的で現実的だ。

仮に上手くいかなかった場合でも、それはそれで割り切っていったん終わらせる(換金する)こともできる。なぜなら、漠然と儲けることでなく、「旅行に行って楽しむこと」が目標であれば、行き先や日数や泊まる宿の水準が下がろうが気持ちの切り替えもしやいわけだ。

ところが、「儲けたい、いい暮らしがしたい、早くリタイヤしたい」などの漠然とした目的では、そもそも投資のゴールも不明確なのだが、引き際のケリをつけにくくなる。行動経済学に 「サンクコスト(埋没費用、sunk cost)の呪縛」という考え方がある。「元を取らなければ損だ」との考えに囚われて合理的で前向きな行動ができなくなることを表す。

「見切り千両、損切り万両」とはよく言ったものだが、この格言は、軌道修正をしてでも、目標を謳歌して初めて生きてくるものであると思う。詳細な投資目標の数値設定をする必要はない。女性脳的に、「(お金を)使う時のことを楽しみながら想像する」ことがポイントだ。


■投資を行うなら“順張り”がベター

投資目標が「楽しくお金を使っている具体的で現実的なイメージ」のしやすいものならば、必然的にあまりに大きな投資成果や長い投資期間を必要としない。ならば、“逆張り”ではなく“順張り”の投資がベターだ。

逆張りとは、簡単に言えば皆が相場に悲観的で懐疑的な印象を持っている安値の時に仕込んでおき、総楽観の時に手仕舞う手法で、ある意味で効率的だ(日本人は概して逆張りを好む)。また、大きな投資成果をもたらす可能性も高い。

一方、順張りとは、楽観的な相場観の時に相乗りするような手法である。下手をすると高値で買ってしまいババをつかませられる可能性もある。

だが、安値と思って投資した商品がいつまで経っても値上がりしなかったり、さらに値下がりしたりする可能性も否めない。バブルが崩壊した1990年初頭からアベノミクスで相場が湧き上がってきたつい最近までの間、一時的なミニバブルはあったものの日本の株価は総じて低迷した。

こうした下落トレンドにあっては逆張りの手法で上手に利益を出していくことはとても難しい。投資商品の研究、投資する金額やタイミングの妙を図ることも必要であるし、マクロ環境での経済情勢に長けているのが望ましい。そういった努力や研究を惜しまず、自分自身で判断できるのであれば、逆張りもよかろう。

そうではなく、皆が関心を持ち、市場参加者(投資を行う人)が増えて活況のある時にだけ投資を始めれば、株の銘柄や投信の種類などについて時間をかけて研究する必要もなければ、あまり難しいタイミングを図る必要もない。まわりから得られるアドバイスや口コミなどの情報も豊富であろう。相場が再び冷え込んだら無理に投資を続けず預貯金に切り替えればよい。非常に簡単な話だろう。

ただし、順張りで投資を行うということは、投資する商品の値が上がりだした後に始めるのだから換金するまでの期間もそう長くはない。欲張って漠然と大きな夢を見るのではなく、目の前の確実な利益に関心を示せる目線が必要である。


■長期投資=長期保有ではない

「投資は長期保有がリスクも低減できてよい」という類のセールストークをいまだに信じている人も少なくはない。だが、よく考えてみればわかるが、ますます目まぐるしくなる世の中で、10年先どころか5年、いや1年先のことですら予測をするのは非常に難しい。投資した商品を長く持ち続けることは不確実性(リスク)を高める。そして長く持つに値する投資商品の選択と購入時期のタイミングを得るには相当のセンスと努力を要する。

ただし、投資の成果は、「高いリターン」と「長い投資期間」の関係で成り立つ。複利効果で考える場合、例えば平均2%のリターンで運用すると資金はおよそ36年後に2倍になる。平均4%のリターンであれば半分の18年、8%ならさらに半分の9年で資金は計算上2倍になる。より高いリターンで投資できれば手っ取り早いが、その分値動きの幅(リスク)も高くなりがちになる。逆により長い投資期間でおこなえるのなら低いリターンでも確実に資金は増えてくれる。ほどよいリターンと期間のバランスがポイントだが、大切なのは、「投資期間が長いこと」と「保有期間が長いこと」は同じ意味ではないという点だ。

投資目標で悩ましいのは「老後生活資金」の場合である。相当長い期間に渡る場合もあるので、具体的かつ現実的にイメージすることは難しい。「まだ先は長いのだから、あくせくせずにやればいい」と、つい投資をしている現実を忘れがちになる。しかし、それはのんびりコツコツやっているのではなく、単に投資を放置しているだけともいえよう。

そこで、長い間でも気持ちが削がれぬよう、投資期間を細切れに設定する工夫をしてみて欲しい。例えば今年投資する資金は3年後にいったん換金し、その時の状況に応じて再投資するといった具合だ。これを毎年行っていけば、投資時期と換金時期を分散する効果が生まれる。この過程では投資対象が時に異なることもあろう。ある時期は預貯金、別の時期は新興国の株式を選んでいるかもしれない。また投資期間を厳密に守る必要もない。様子を見ながらある時期には長めに設定してもよいだろう。

そしてその際には、「この投資資金は老後生活のためなのだから」と頑なに考えるのではなく、半分くらいはその時々に好きなことのために使ってしまうのもよいかもしれない。

老後の生活費が月々いくらで、老後期間が何年続くのかを予測することはできない。ならば、老後に一体いくらの蓄えが必要かを計算することも、実はナンセンスなのだ。コツコツと自分へのご褒美も兼ねながら楽しく、柔軟に継続できることが重要であると思う。


■少額でも楽しく使うための成果を確実に得る

投資においては、適宜、割り切って軌道修正できる柔軟さが大切である。そのためには使う時を楽しくイメージできる目標設定は欠かせない。

また、あれこれ悩んで熱心に投資理論や銘柄を研究しているだけではベストアンサーは得にくい。難しく考えずにまず経験してみることがベターだ。上昇トレンド下のプチ期間の順張り投資であれば、何を商品として選ぶのかは然程重要な問題ではない。

さらに、一つの目標を相当長い期間追い続けるのは容易なことではない。ならば、息抜きを入れながら進むのも一考だ。少しでも長い期間、安心し、かつ安定的に投資を行うことは、少なくとも一つの投資商品を長期で持ち続けることではない。漠然と大きな夢を追いかけるのでなく、目の前のプロセスを楽しみたい。

“女性脳的な投資”では、大きな投資成果を狙うことは難しいかもしれない。しかし、確実な果実を着々と積めない者は、逆に大きな成果を知ることはできないと考える。それは単なる運任せに過ぎないのだ。

投資を、知的好奇心を満たすゲームと捉えるのでなければ、投資も貯蓄も、「何かにお金を使う」ための行為であり手段に過ぎない。とかく我々は、貯めること、殖やすこと、財を持つことに関心を注ぐ。そうであるから不安にもなるし焦燥感に駆られることもある。そうではなく、「使う」「使える」ことこそが大事なのだ。闇雲に儲けて有り余るお金を得ても、「何に使えばよいのかわからない」人は幸福とはいえない。

取るに足らない消費でもよい。自分磨きやご褒美といった自分への投資でもよい。それを楽しく想像できることが幸せであり、そのために必要であると感じたら、投資という方法を選べばよいだけだ。

(日経BP社Webより引用)

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